聖と俗が共鳴する、鮮やかなカオス世界
この世の楽園って、どんな所だろう。
私の作品は、今自身が立っている現代社会、とりわけノイズとスピードに溢れた都心の光景から、
いま・ここのユートピアを描き出すことがテーマです。
作品は主に都市の写真、タブレットでのデジタルドローイング、アクリル絵の具の3種を重層的に使用し制作します。
制作過程で重きを置いているのが、足を動かす事です。
都心部の工業地帯、ストリートアートで埋め尽くされた路地裏、クラブやライブハウスの密集しているエリアを歩き回り、
スナップショットを撮りためていきます。
騒々しさと人疲れに象徴される東京も、そこには穏やかな森林や山海の代わりに、
人々の熱量とテクノロジーが生み出す硬質な、震えるような美しさがあります。
そうした現代だからこそ触れられる美のイメージから出発し、
写真から浮かんでくるイメージをビビットな色彩と仏教・民族的モチーフを重ねながら、パラダイスの情景を描き出しています。
楽園というモチーフに向かい合う際、何より大切にしているのは「現実世界を離れない」ことです。
作品群を貫ぬくコンセプトは、大乗仏教・法華経に見られるユニークな浄土観「娑婆即寂光」です。
楽園を考える際、海の向こうであったり、来世であったりと、
歴史の中で多くの人々が自分の生きている世界以外にそれを求めてきたのではないかと思います。
対して、人々の楽園は自分が今立っている場所そのもの、どんなに汚れた土地に思えても、
その地面こそ唯一浄土を作っていける場所なのだ…という趣旨の言葉です。
実際の都市の風景写真をベースにイメージを編集するプロセスはこのコンセプトに起因しています。
目まぐるしいコンクリートジャングルの、パラダイスの気配をかぎ取れるよう嗅覚をたくましくして、
いま・ここでの楽園の情景を写し取っていきたいと思います。
その光景が、ご覧いただける方々にとって、現実世界をほんの少しでも面白く感じるきっかけになれば幸いです。
With interests in Buddhism philosophy and religious symbolism,
Taki KITADA engages herself in visualizing mythology in the contemporary context.
Her work is mainly composed of urban photography, digital drawing, and acrylic painting.
As an important part of practice, she often walks around cities and takes random snapshots.
After adding layers of edits on the photographs, she reorganizes these images with acrylic painting and intricate linear drawing. The work mainly shows mythological characters and stories hovering around industrial landscape in vivid color stream.
Using both digital software and traditional painting materials, she harmonizes various visual languages and conceptual elements, such as spiritual and materialistic.
Through reconstructing actual images of cityscape with her interpretation,
Taki KITADA aims to transform mundane reality to a paradise scenery.
In such a hybrid and chaotic imagery, her preoccupation is illustrating Buddhism philosophy,
especially about the concept of paradise, on her artwork.
While heaven in religious context is often regarded as outside/after world from our real world,
Buddhism philosophy has a unique definition about it: paradise for human being is never separated from our real society.
The land of the earth is the only and main field that we can nourish own paradise in, by relentless effort and hope.
Along with this concept, her painting practice is directed to find beauty in a concrete jungle and garnish it with imagination, to suggest potential utopia in the contemporary world.